臨床研修修了証と臨床研修修了登録証の違いを解説

臨床研修修了証と臨床研修修了登録証の違いを解説

医師については平成16年4月から、歯科医師にについては平成18年4月から、臨床研修を受けることが義務になりました。
いわゆる、臨床研修の必修化です。
指定の病院等で医師は2年以上、歯科医師は1年以上臨床研修を受けることで、研修を受けた病院から臨床研修修了証が交付されます。

また、医療機関に採用される際などには、臨床研修修了登録証の原本提示を医療機関から求められることもあります。
今回は、この臨床研修修了証と臨床研修修了登録証の関係性や、どんな違いがあるのか、ということを取り上げて解説いたします。

この記事の想定読者

  • 自分が経営する医療機関で医師・歯科医師を雇用したい院長先生
  • 診療行為をするすべての医師・歯科医師の先生

目次

臨床研修の必修化

医師の臨床研修

医師の臨床研修は、医療法等の一部を改正する法律(平成12年法律第141号)の第4条で、医師法を一部改正するという形で必修化されました。
この法律自体は平成12年12月6日に公布されたものですが、附則第1条で、第4条の施行日は平成16年4月1日と定められていたため、実際に必修化されたのは平成16年4月1日からです。

具体的には、

診療に従事しようとする医師は、2年以上、都道府県知事の指定する病院または外国の病院で厚生労働大臣の指定するものにおいて、臨床研修を受けなければならない

という形で規定されています(医師法第16条の2第1項)。

また、厚生労働大臣は、臨床研修を修了した者について、その申請により、臨床研修を修了した旨を医籍に登録する、とも規定されています(医師法第16条の6第1項)。

歯科医師の臨床研修

歯科医師の臨床研修は、医療法等の一部を改正する法律(平成12年法律第141号)の第5条で、歯科医師法を一部改正するという形で必修化されました。
医師の臨床研修の必修化と同じく、この法律自体は平成12年12月6日に公布されたものですが、附則第1条で、第5条の施行日は平成18年4月1日と定められていたため、実際に必修化されたのは平成18年4月1日からです。

具体的には、

診療に従事しようとする歯科医師は、1年以上、歯学もしくは医学を履修する課程を置く大学に附属する病院(歯科医業を行わないものを除く。)または厚生労働大臣の指定する病院もしくは診療所において、臨床研修を受けなければならない

という形で規定されています(歯科医師法第16条の2第1項)。

また、厚生労働大臣は、臨床研修を修了した者について、その申請により、臨床研修を修了した旨を歯科医籍に登録する、とも規定されています(歯科医師法第16条の4第1項)。

臨床研修修了証と臨床研修修了登録証の違い

臨床研修修了証とは

医師の臨床研修修了証

医師の臨床研修修了証は、臨床研修が終了した際に、基幹型臨床研修病院から交付される書面です(医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令第19条第2項)。

医師法では、都道府県知事が指定する病院、または外国の病院で厚生労働大臣が指定するものにおいて、臨床研修を受けることとされています。
都道府県知事が指定する病院を臨床研修病院と呼び、臨床研修病院は基幹型臨床研修病院協力型臨床研修病院の2種類に区分されています。
臨床研修修了証を発行するのは前者の基幹型臨床研修病院です。
基幹型と協力型の違いは、以下のとおりです。

①基幹型臨床研修病院 他の病院または診療所と共同して臨床研修を行う病院で、当該臨床研修の管理を行うもの
②協力型臨床研修病院 他の病院と共同して臨床研修を行う病院で、①に該当しないもの

医師の臨床研修修了証には、以下の項目が記載されます。

①氏名、医籍の登録番号および生年月日
②修了した臨床研修に係る研修プログラムの名称
③臨床研修を開始し、および修了した年月日
④臨床研修を行った臨床研修病院(研修協力施設と共同して臨床研修を行った場合には、臨床研修病院および研修協力施設)の名称

歯科医師の臨床研修修了証

歯科医師の臨床研修修了証は、臨床研修が終了した際に、単独型臨床研修施設または管理型臨床研修施設から交付される書面です(歯科医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令第17条第2項)。

歯科医師法では、臨床研修は、医科もしくは歯科を履修する課程を置く大学の附属病院(歯科医業を行うものだけ)か、厚生労働大臣の指定する病院・診療所において、臨床研修を受けることとされています。
厚生労働大臣が指定する病院は、単独型臨床研修施設管理型臨床研修施設協力型臨床研修施設連携型臨床研修施設の4種類に区分されています。
それぞれの区分の違いは、以下のとおりです。

①単独型臨床研修施設 単独で、または研修協力施設(臨床研修施設(①~④のいずれかの指定を受けた病院または診療所。)と共同して臨床研修を行う施設で、臨床研修施設および歯学または医学を履修する課程を置く大学に附属する病院(歯科医業を行うものだけ。以下「大学病院」。)以外のものをいう。)と共同して臨床研修を行う病院または診療所
②管理型臨床研修施設 他の施設と共同して臨床研修を行う病院または診療所(①に該当するものを除く。)で、当該臨床研修の管理を行うもの
③協力型臨床研修施設 他の施設と共同して臨床研修を行う病院または診療所(①に該当するものを除く。)で、②に該当しないもの(3月以上臨床研修を行うものに限る。)
④連携型臨床研修施設 他の施設と共同して臨床研修を行う病院または診療所(①に該当するものを除く。)で、②・③に該当しないもの

歯科医師の臨床研修修了証には、以下の項目が記載されます。

①氏名、歯科医籍の登録番号および生年月日
②修了した臨床研修に係る研修プログラムの名称
③臨床研修を開始し、および修了した年月日
④臨床研修を行った臨床研修施設(研修協力施設と共同して臨床研修を行った場合には、臨床研修施設および研修協力施設)の名称

臨床研修修了登録証とは

臨床研修修了登録証は、医師法第16条の6第1項の規定に基づいて、医師が臨床研修を修了した旨を厚生労働大臣に申請し、医籍にその旨登録されたとき、または、歯科医師法第16条の4第1項の規定に基づいて、歯科医師が臨床研修を修了した旨を厚生労働大臣に申請し、歯科医籍にその旨登録されたときに、交付される書面です(医師法第16条の6第2項、歯科医師法第16条の4第2項)。

臨床研修修了登録証には、氏名、生年月日、医籍(歯科医籍)の登録番号、臨床研修を修了して医籍(歯科医籍)に登録した旨、臨床研修を修了した旨医籍(歯科医籍)に登録された日付が記載されています。

臨床研修修了証と臨床研修修了登録証の違い

臨床研修修了証は、臨床研修が終了した旨を臨床研修を実施した医療機関が証明してくれる書面です。
臨床研修修了登録証は、医師・歯科医師の申請に基づいて、臨床研修を修了した旨が医籍・歯科医籍に登録されたことを証明してくれる書面です。

現在の医師法・歯科医師法の制度では、臨床研修は義務となっていても、医籍への臨床研修を修了した旨の登録は自動的には行われず、臨床研修を修了した医師・歯科医師の申請に基づいて行われることになっています。

臨床研修を修了した旨の登録をしないとどうなるか

厚生労働省からの通知

平成26年5月28日 医政医発0528第2号/医政歯発0528第2号 厚生労働省医政局医事課長通知通知「臨床研修を修了した者であることの確認等について」という通知で、診療に従事させる目的で医師や歯科医師を採用する際の、臨床研修を修了した者であることの確認方法について、方向性が示されています。

この通知によると、臨床研修を修了した者であることの確認方法として、以下の4つが掲げられています。

①臨床研修修了登録証の原本の提出を求めることで、確認を行うこと。
②臨床研修修了登録証を亡失したことで提出できない場合は、すみやかに再交付申請を行わせること。
採用時点で臨床研修修了登録証の交付を受けていない場合は、臨床研修修了証等の原本を確認した後に診療に従事させ、臨床研修修了登録証の交付後に当該登録証の原本の提出を求めて確認を行うこと。
④①~③の方法でも臨床研修を修了した者であることが確認できない場合は、医政局医事課(医師の場合)、医政局歯科保健課(歯科医師の場合)に連絡をすること。

医師法上の取扱い

医師が診療に従事する場合、臨床研修を受けなければならないと定められていることは、既にご案内のとおりです。
また、臨床研修を修了した旨を医籍に登録するためには、本人からの申請が必要となります。
ただし、いずれの規定についても、医師法上の罰則規定は設けられていません。

とはいえ、医師法第16条の2第1項の規定では明確に、診療に従事する場合は研修を受けなければならないとしているので、臨床研修を受けずに診療に従事する場合は、本条違反となります。

医師法第4条では、医師免許を与えないことがある者として第4号の規定で「医事に関し犯罪または不正の行為のあった者」としており、医師法第7条では「医師が第4条各号のいずれかに該当し、または医師としての品位を損するような行為のあったときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。」として、①戒告、②3年以内の医業の停止、③免許の取消しのいずれかの行政処分をすることができることとされています。

臨床研修を修了しないで診療をする行為が、ただちにこれらの規定に該当するとは限りませんが、こうした行政指導や行政処分の対象になる可能性は想定した方が良いでしょう。

なお、臨床研修を修了している者が、医籍への登録申請をしていない場合については、それをもってただちに医師法に違反しているとまでは言えません。
先に示した厚生労働省通知を見ても、臨床研修を修了しているが、医籍への登録がなされていない医師に対して、医療機関は登録の申請をするように励行すること、ということのみに言及されていることからも、勤務医として診療に従事する医師が、臨床研修を修了しているが医籍へ登録していないことについては、医師法上の強制力は、現時点では無いと思われます。

歯科医師法上の取扱い

歯科医師法上の扱いについも、基本的には医師法上の扱いに準じており、臨床研修修了登録証の交付を受けていないからといって、ただちに歯科医師法に違反しているとまでは言えません。

ただし、医師も歯科医師も、次の医療法との関係においては、臨床研修を修了した旨の登録を医籍・歯科医籍にしていないことについては注意が必要です。

医療法との関係

医療法では、医師法第16条の6第1項の登録を受けた者(臨床研修等修了医師)および歯科医師法第16条の4第1項の登録を受けた者(臨床研修等修了歯科医師ではない者が診療所を開設するときには、都道府県知事(保健所設置自治体の場合は当該自治体の長)の許可を受けること、とされています(医療法第7条第1項)。

また、病院や診療所の開設者は、病院・診療所が医業をなすものである場合には臨床研修等修了医師に、歯科医業をなすものである場合には臨床研修等修了歯科医師に、これを管理させなければならない、とされています(医療法第10条第1項)。
つまり、病院・診療所の管理者になるためには、臨床研修を修了した旨を医籍・歯科医籍に登録する申請をし、臨床研修修了登録証の交付を受けなければなりません。

個人開業医として医科・歯科の病院・診療所を開設する場合や、医療法人・一般社団法人が開設する病院・診療所の管理者の職に就く場合は、必ず忘れずに、医籍・歯科医籍への登録申請をしておくようにしましょう。

医籍・歯科医籍への登録申請が免除される人

医師の臨床研修は平成16年4月1日から、歯科医師の臨床研修は平成18年4月1日から、必修化されました。
このときに、医療法等の一部を改正する法律の附則第8条および第11条で、
法施行の際に医師免許を受けている者
法施行の前に医師免許の申請をして、法施行後に医師免許を受けた者
については、臨床研修を修了した旨の医籍・歯科医籍への登録を受けた者とみなされる、経過措置規定が設けられました。

したがって、医師の場合は平成16年3月31日までに医師免許を受けていたか、医師免許の申請をして同年4月1日以降に医師免許を受け、歯科医師の場合は平成18年3月31日までに歯科医師免許を受けていたか、歯科医師免許の申請をして同年4月1日以降に歯科医師免許を受けたのであれば、改めて臨床研修を受けることも、医籍・歯科医籍への登録申請をすることも、免除されるということになります。

臨床研修を修了した旨の登録申請方法

臨床研修修了登録証の交付申請に必要な書類は次のとおりです。

①臨床研修修了登録証申請書
②臨床研修修了証の写し(A4サイズの大きさ)
③医師・歯科医師免許証の写し(A4サイズの大きさ)
④3100円分の収入印紙(①の申請書に貼付する)
⑤臨床研修修了登録証送付用封筒(575円分の切手を貼付)

申請書の提出先は、申請者の住民票上の住所地を担当する、地方厚生局に提出します。

詳細は、厚生労働省のWebサイトにも掲載さ入れています。
医師の臨床研修修了登録証の交付申請手続
歯科医師の臨床研修修了登録証の交付申請手続


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医療法人は医療法で様々な制約を課されており、かなり細かい法律の知識が必要です。
臨床研修が終了した後、医療機関から臨床研修修了証の交付を受けて、その後の医籍・歯科医籍への登録申請をしていないという事例は、意外と多くあります。
勤務医として診療に従事する場合でも、厳格に現物確認をしている医療機関では、臨床研修修了登録証の交付を受けていないと勤務できないこともございます。
また、病院や診療所の管理者にも就任できなくなるため、臨床研修を修了したらすみやかに登録申請をするようにしましょう。

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