医療法人の設立認可から診療開始までに行う手続

医療法人の設立認可から診療開始までに行う手続

医療法人は、設立するためには都道府県の認可を受ける必要があります。
しかし、認可を受けて終わりではなく、その後も実際に診療を開始するまでには様々な手続を行っていく必要があります。
もっとも手間と時間がかかるのは都道府県の認可手続ですが、認可後は診療所の許認可手続や指定申請、金融機関や契約の変更、税務署、保険年金手続と、短期間で広範囲にわたる分野をカバーする必要があり、最後まで気を抜くことができません。

この記事では、医療法人か手続きの後半、認可後に行うことについて解説をしています。
認可手続については以下の記事をご参照ください。

この記事は、こんな方にオススメです

  • 個人診療所を医療法人化したいと考えている歯科・歯科医師の先生
  • クライアントの診療所の医療法人化を相談されている弁護士・公認会計士・税理士の先生

目次

医療法人の設立登記申請

医療法人が成立するタイミング

医療法人は、都道府県知事等の認可を受けただけはまだ成立していません。
認可を受けた後、主たる事務所の所在地を管轄する地方法務局に、医療法人の設立登記申請をすることで、医療法人は成立します(医療法第46条第1項)。
登記は、医療法人の設立認可書を受け取った日から14日以内にすることとされています(組合等登記令第2条第1項)。
そして、この登記申請をした日が、医療法人の設立日、誕生日となります。

登記申請をしてから、登記が完了して法人の登記簿謄本を取得することができるようになるまで1週間~2週間程度の時間を要します。

登記申請に必要な書類

医療法人の設立登記では、以下の項目を登記します(組合等登記令第2条第2項、別表)。

①医療法人の目的、業務
②医療法人の名称
③医療法人の事務所の所在場所
④代表権を持つ人の氏名、住所、資格(例:理事長)
⑤法人の存続期間や解散理由を定めた場合は、その存続期間と解散理由
⑥資産の総額

登記の申請をする上で、これらの事項は自己申告制ということではなく、登記する内容に根拠があることを証明するために、以下の書類を添付します(組合等登記令第16条第2項、第3項)。

①医療法人の定款
理事長を選出したことが分かる書面
③理事長の就任承諾書
④医療法人の設立時の財産目録
⑤医療法人の設立認可書

理事長を選出したことが分かる書面としては、通常は医療法人の設立総会議事録を提出します。
医療法人の設立総会の席上で、理事長に選出されたことを承諾し、その承諾した旨が議事録に記載されている場合には、就任承諾書は不要となります。

医療法人の設立時の理事長を定款で定めていて、その定款を理事長を選出したことが分かる書面として提出した場合には、理事長の就任承諾書が必要になります。

上記は一例ですので、詳細については法務局に問い合わせをするか、登記の専門家である司法書士にお問い合わせいただくのが良いかと思います。

登記が完了した旨の届出

医療法人の設立登記が完了したら、認可を受けた都道府県または市町村に対して、登記の年月日を届出する必要があります(医療法施行令第5条の12)。
条文上は「遅滞なく」提出すればよいとなっていますが、登記が済んで登記簿謄本を取得できるようになり次第、忘れずにすぐに提出するようにしましょう。

登記の届出については、登記の年月日を証明するために登記簿謄本の原本を添付します。

銀行口座開設、契約名義変更等

医療法人の登記が完了したら、これまで個人名義だった様々な契約や銀行口座を、法人名義に変えていく必要があります。
一般的には、以下の対応が必要です。

①法人名義の銀行口座開設
②水道光熱費等の公共料金に関する契約の名義変更
③医療機器等のリース契約がある場合は、その契約の名義変更
④医療機関に関する土地や建物が賃貸借契約の場合は、その契約の名義変更
⑤医療機関に関する個人所有の土地や建物を医療法人に拠出した場合は、所有者の変更の登記
往診用の個人所有の自動車を医療法人に拠出した場合は、自動車の名義変更
⑦各種引き落とし口座の変更

医療法人を設立したら、まずは銀行口座の開設を最優先に行います。
医療法人に関するお金と、個人に関するお金は明確に分けて管理しなければなりません。
設立時の財産目録の記載に従って、法人に振り分けるべき財産の移転を漏れなくするようにしてください。

税務・労務・年金・健康保険等の手続

医療法人の設立直後は、とにかくやることが盛りだくさんです。
診療を開始するための手続以外にも、必要な手続が控えています。

税務関係手続

税務関係の手続としては、税務署・都道府県税事務所・市町村の税務担当部署に対して手続をする必要があります。
日本の税制は、国税と地方税に分かれており、地方税は都道府県税と市町村税に分かれているため、それぞれの手続が必要となります。

税務署

税務署に対しては、一般的には以下の書類を提出します。
具体的には、各税務署にご確認いただくか、顧問税理士さんにご確認ください。

①法人設立届出書
②青色申告承認申請書
③源泉所得税納期の特例申請書
④棚卸資産の評価方法の届出書
⑤減価償却資産の償却方法の届出書
⑥給与支払事務所等の開設届

都道府県税事務所・市町村

都道府県税事務所と市町村に対しては、法人設立届出書を提出します。
こちらも、詳細には顧問税理士さんにご確認いただくと、確実です。

労務・保険・年金関係手続

税金関係の手続と同様に、保険や年金手続も医療法人設立後、すみやかに行う必要があります。
これらの保険・年金関係の手続の専門家は社会保険労務士です。
もし既にお付き合いがあれば、詳細はぜひご相談いただければと思います。

具体的には、以下のような手続きが必要になります。

①健康保険・厚生年金保険新規適用届
②雇用保険適用事務所設置届
③保険関係成立届
④医師国保の脱退
⑤その他、就業規則の届出や各種労使協定等の届出等

法人診療所の許認可等手続

法人診療所開設のための許認可等手続の全体像

医療法人を設立して、医療法人の診療所として診療を開始するために一般的に必要となる手続は以下のとおりです。

①法人診療所の開設許可申請(医療法第7条第1項)
②個人診療所の廃止届(医療法第9条第1項)
③法人診療所の開設届(医療法施行令第4条の2第1項)

その他、各診療所の状況に合わせて、以下の手続も必要になります。

①法人診療所の病床設置許可申請(医療法第7条第3項)
②法人診療所の構造設備使用許可申請(医療法第27条)
③法人診療所のエックス線装置備付届(医療法第15条第3項)
④個人診療所のエックス線装置廃止届(医療法施行規則第24条第12号)

事前協議

診療所の開設許可、病床設置許可、構造設備使用許可といった、許可申請をする際には、必ず管轄の行政部門に対して事前協議を行います。
もちろん、事前協議なしで申請することができない訳ではありませんが、診療所の構造設備にかかわる許可申請ですので、事前協議なく申請をして現状の構造設備では許可が出ないとなってしまっては、大変です。

また、病床設置許可については、都道府県ごとに定めている地域医療計画に基づいて、病床数の調整が行われています。
病床を設置したいからといってどこでも何床でも設置できるわけではないので、医療法人の設立認可と併せて進める場合には、必ず認可の仮申請をするよりも前には事前協議を済ませておくことを推奨いたします。

なお、診療所に設置できる病床数は19床までで、20床以上になると病院として扱われます(医療法第1条の5)。

事前協議先の大原則は都道府県の担当部門ですが、各自治体によって権限が他の行政部門に渡されている場合があるので、よく確認するようにしてください。

診療所の開設許可と構造設備使用許可は、診療所の開設予定地域が保健所設置自治体の場合にはその自治体の長に対して申請をすることとなっております。
さらに、その自治体の長から保健所の所長に事務権限が受け渡されていることがほとんどですので、このようなときには管轄の保健所へ事前協議をすることになります。

診療所の開設許可申請

医師や歯科医師でないものが診療所を開設する際は、都道府県知事または保健所設置自治体の長の許可を取得する必要があります(医療法第7条第1項)。
この医師・歯科医師でないものの中には、医療法人も含まれます。
医療法人は、医師や歯科医師そのものではないので、診療所を開設するにあたって事前に許可を取得しなければならないのです。

許可申請のポイントは事前協議にあるので、医療法人の認可手続の初期段階で、入念に協議をします。

実際に診療所の許可申請をすることができるのは、医療法人の認可を受けて、法務局で医療法人の設立登記申請をして、登記手続完了後に登記簿謄本を取得できるようになってからです。
許可申請後、診療所に審査担当者が実際に足を運び、実地検査を行います。
事前協議で確認した構造設備と相違なく、許可基準を満たしているかどうかの確認を行います。

許可申請をしてから実地検査、許可証の交付までおおむね2週間程度です。
医療法人の設立認可後、医療機関として保険適用を受け、診療を開始するまでには1か月程度しか時間が無いので、診療所の開設許可申請は、医療法人の設立登記が完了し次第すみやかに申請することができるように、段取りを組んでおくことが重要です。

なお、病床の開設許可と病床使用のための構造設備使用許可手続を同時に進める場合は、各自治体でスケジュール感が異なるので、よくよく関係部門と調整をしてください。
場合によっては、無床診療所としていったん開設し、その後改めて病床の開設許可、構造設備の使用許可申請をするという、2段階での手続きを検討する必要もあります。

法人診療所の開設届と個人診療所の廃止届

診療所の開設許可を受けたものが、実際に診療所を開設したときは、10日以内に開設した旨を届け出る必要があります(医療法施行令第4条の2第1項)。
医療法人は診療所の開設許可を受けて診療所を開設しなければならないので、実際の診療開始日から10日以内に開設届を提出します。

また、個人で開設をしていた診療所については法人診療所の開設とともに廃止をすることになるため、廃止をした旨の届出を廃止したときから10日以内に提出します(医療法第9条第1項)。

その他、診療用のレントゲンを設置している場合には、法人診療所としてエックス線装置備付届を提出します(医療法第15条第3項)。
個人診療所時代から届出をしていた場合は、個人診療所としてエックス線装置廃止届を提出します(医療法施行規則第24条第12号)。

エックス線装置備付届を提出する場合には、漏洩線量測定結果の報告書を添付します。
病院・診療所の管理者は、放射線障害の発生する可能性がある場所について、診療を開始する前に1回は、放射線量や放射性同位元素による汚染の状況を測定する義務があるため(医療法施行規則第30条の22第1項)、直近の測定結果を提出するようにします。

保険医療機関の指定申請(厚生局関係)

法人診療所の指定申請

法人化して、診療行為を開始するだけであれば、診療所の開設許可や開設届を提出すれば、問題はありません。
しかし、まだこの段階では保険診療をすることができません。
逆に言えば、自由診療しか行わないような診療所であれば、このまま営業を始めていただければOKです。

もし、保険診療をする場合には、保険医療機関としての指定を受けるための申請をする必要があります(健康保険法第63条第3項第1号、第65条第1項)。
これを保険医療機関の指定申請と呼んでいます。
指定の申請は、管轄の地方厚生局長あてに提出します(保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令第3条第1項)。

個人診療所の指定の辞退

法人診療所で指定申請を受けるということは、個人診療所でも指定を受けていたはずです。
このとき、1か月以上の予告期間を設けて、保険医療機関は指定を辞退することができます(健康保険法第79条第1項、保険医療機関及び保険薬局の指定並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令第10条第1項)。

保険医療機関の指定のスケジュールと遡及適用

保険医療機関の指定は、一般的には毎月10日前後までに受け付けた申請について審査を行い、翌月の1日付で指定を受ける運用を行っています。
つまり、4月1日に診療所を開設してすぐに指定申請をしたとしても、指定を受けるのは5月1日となり、4月からの1か月については保険適用外の診療となってしまいます。

ただし、以下のケースにあてはまるときは、保険医療機関の指定日を過去の日付で遡及適用することができる扱いとなっています(昭和32年7月18日厚生省保険局健康保険課長通知保険発第104号、昭和33年8月21日厚生省保険局健康保険課長通知保険発第110-2号)

①保険医療機関の開設者が変更になり、開設者の変更と同時に引続き開設され、患者が継続して診療を受けている場合
②保険医療機関の開設主体が個人から法人、または法人から個人に変更となり、患者が継続して診療を受けている場合
③保険医療機関が病院から診療所、または診療所から病院に組織変更し、患者が継続して診療を受けている場合
④保険医療機関がおおむね2km以内の範囲で移転し、同日付で旧院を廃止、新院を開設した場合で、患者が継続して診療を受けているとき

個人診療所から法人診療所になり、診療場所が変わらず、診療対象も特別変わらないような場合であれば、保険医療機関の指定を遡及適用することができ、4月1日に診療所を開設し、その直後に指定申請をしたようなときでも、4月1日から保険診療をすることが可能です。

施設基準の届出

保険医療機関が診療報酬の算定をする際に、一定の設備や人員を満たしていることを届出することを施設基準の届出と呼んでいます。
医療法人化に伴い、法人診療所として施設基準の届出を、診療所開設地を管轄する地方厚生局の事務所宛に行います。

診療報酬の算定については、
「診療報酬の算定方法」(平成20年3月5日厚生労働省告示第59号)
「基本診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第62号)
「特掲診療料の施設基準等」(平成20年3月5日厚生労働省告示第63号)
といった告示がベースになって運用されています。

その他の手続

ここまで開設してきた以外にもそれぞれの医療機関の目的に応じて、様々な手続が存在します。
以下に、その一例をあげておきます。

①労災保険指定医療機関の指定
②難病指定医療機関の指定
③麻薬関連手続
④感染症指定医療機関の指定
⑤生活保護法等指定医療機関の指定

基本的には、個人診療所時代でも行ってきたことを、再度法人でも手続する形になるのではないかと思います。


医療法人に関するお手続で気になること、相談してみませんか?

行政書士TLA観光法務オフィスでは、医療法人やクリニックに関するお手続のサポートをしております。
診療所の医療法人化は、どの都道府県で進めることになっても、非常に手間と時間のかかる手続です。
そして、都道府県の認可を受けるだけでなく、受けた後も診療を開始するまで、非常に様々な手続が待っています。

もちろん、ドクターご自身でもやれないことはない手続ですし、場合によってはクリニックのスタッフに任せることもあるかもしれません。
しかし、法人化後の診療開始に向けて用意をしていく中で、全ての手続をドクターご自身やスタッフの方がする必要があるのでしょうか。
私共は、貴重なドクターのお時間を確保するため、過去の知見を集約して、医療法人化後の最適な診療開始に向けて適切なロードマップをお示しすることが可能です。

もし、医療法人化について、気になることがございましたら、ぜひ一度私どもにお話をお聞かせください。
ご相談は下記お問い合わせフォームより受け付けております。
当面の間、ご相談には無料で対応しております。
あなたからのご連絡をお待ちしております。

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