医療法人を新しく立ち上げて診療を開始するためには、①都道府県の認可、②法務局への登記、③保健所への診療所手続、④厚生局への保険医療機関の指定手続、⑤その他の税務署、社会保険関係手続等の、様々な手続に対応していく必要があります。
その中でも、特に都道府県の認可が最も作業量が多く、手続に時間を必要とします。
この記事では、医療法人の立ち上げの中でも都道府県の認可手続について手続の流れや必要な書類、準備すべきことなどについて詳細に解説いたします。
なお、医療法人には財団と社団がありますが、現在設立される多くの医療法人は社団形態であるため、この記事でも医療法人社団を立ち上げることを前提として記載をしております。
- 個人診療所を医療法人化したいと考えている歯科・歯科医師の先生
- クライアントの診療所の医療法人化を相談されている弁護士・公認会計士・税理士の先生
医療法人の設立認可手続関する法的根拠
具体的な医療法人の設立認可手続の内容に入る前に、まずは医療法人の認可がどのような法律の根拠に基づいて行われているのかを整理します。
細かい話には興味がない!という方は、次のセクションの、設立認可のスケジュールについての説明まで読み飛ばしていただければと思います。
都道府県知事がする認可
医療法人に関する法規制は、医療法という法律の第6章、条文数でいうと第39条から第69条までの範囲で定められています。
という規定があるように、医療法人の設立認可は都道府県知事が行う事務です。
かつては、広域医療法人という、開設する医療機関が2以上の都道府県にまたがる場合の認可について、厚生労働大臣が認可権限を持つ制度がありましたが、現在は医療機関が2以上の都道府県にまたがっていても、主たる事務所の所在地の都道府県知事の認可を受けることができれば、良いことになっています。
市町村長がする認可
医療法上は、医療法人の認可権者は都道府県知事となっております。
しかし、実際に手続に関わったことのある方の中には、都道府県以外の認可権者による認可を受けたことがあるのではないかと思います。
例えば、神奈川県のうち、横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市については、主たる事務所と開設する医療機関の全てが、同一市内にある場合には、それぞれの市長の認可を受けることになっています。
これは、地方自治法第252条の17の2という条文で、都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例を定めることで市町村が処理することとすることができる、と定められており、この条文を受けて各都道府県で事務処理の特例に関する条例を定めて、権限を市町村に移譲していることがその理由となっております。
神奈川県の場合は、事務処理の特例に関する条例という名称の条例を定めて、その中で、医療法人の認可に関する事務については、2以上の市町村にまたがって医療機関を開設しているものを除いて上記4市に権限を移譲しているため、横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市の区域内で完結する医療法人については、それぞれの市町村が認可事務をすることとなります。
どの市町村が事務処理の権限を譲り受けるかについては、各都道府県によって判断基準が異なるため、各都道府県の事務処理がどのようになっているかは、一度条例などで確認すると良いでしょう。
医療法人の設立認可手続のおおまかなスケジュール
医療法人の認可スケジュールは、認可を担当する都道府県や市町村によって大きく異なるため、この記事では東京都の設立認可スケジュールに基づいて解説をいたします。
東京都以外の自治体で認可を受ける場合は、それぞれの自治体の認可スケジュールに読み替えていただきたいと思います。
まず、東京都の年間認可スケジュールは2回に分かれています。
第1回が8月末~9月頭に仮申請を行うスケジュール、第2回が3月中旬~下旬に仮申請を行うスケジュールです。
仮申請よりも前の期間に、医療法人の設立に関する説明会が開催されますが、東京都の場合は参加は任意です。
その他の自治体では取扱いが異なることもあるので、説明会も含めてスケジュールは良くチェックするようにしてください。
第1回、第2回いずれも、仮申請の受付期間は1週間程度です。
その仮申請受付期間に書類を提出できない場合、次の申請スケジュールまで待つことになってしまいます。
仮申請受付期間は必ずしも固定ではないので、必ず、都度東京都のWebサイトで確認するようにしてください。
仮申請の受付後、約3か月の期間を使って申請書類の中身をチェックされて、必要に応じて補正対応の指示が入ります。
この補正対応をしつつ、本申請の受付締切期間までに書類の準備を進めていくことになります。
本申請の受付期間は、仮申請の締切からおおむね3か月後の末日に設定されることが多いです。
本申請をした後、東京都の医療審議会が開催されて、審議会で認可についての意見を受け、医療法人を認可する/しないことが決定します。
認可が決まると、その後認可証が交付されることになります。
認可証が交付されるまで、仮申請からおよそ5か月程度です。
設立認可のための手続:仮申請まで
いつ頃から準備を始めたらいいか
医療法人は、株式会社や一般社団法人と違って思い立ったときにすぐに誰でも設立できるわけではありません。
医療法人はその設立にあたって都道府県知事の認可を受けることが求められており、認可を受けるにあたって様々な資料を提出して、審査を受ける必要があります。
東京都で医療法人の申請をする場合、認可スケジュールが決まっているため、法人として診療を開始する1年前を目安に、準備を始めると良いでしょう。
なお、法人化にあたって診療所を新築するような場合には、さらにもう半年程度余裕をもって準備を始めると、無理なく手続を進められると思います。
説明会への参加
一般的に、医療法人の設立をするにあたって都道府県で説明会を開催しています。
都道府県によってはこの説明会への参加を義務付けていることもありますが、東京都の場合は説明会への参加は任意です。
医療法人の手引きが市販されており、また東京都のWebサイトからもダウンロードできるようになっているので、日程の都合が合わずに説明会に参加できなかった場合は、各自でダウンロードなどして確認しておくようにしてください。
医療法人の社員と役員
医療法人の設立を決めた後にまずやることは、医療法人の組織を構築することです。
組織の構築というと大げさに聞こえますが、医療法人の社員と役員を確定させます。
医療法人の社員とその人数
医療法人の社員は従業員という意味ではなく、医療法人社団の最高意思決定機関である社員総会で一票を投じる権利を持った人のことです。
社員は、社団という、人の集まりの構成員と言い換えることも可能です。
株式会社でいう、株主に該当します。
医療法人の社員の資格の得喪については、定款で定めることとされています(医療法第44条第2項第8号)。
社員の員数は医療法上明確な規定が設けられている訳ではありませんが、東京都の場合は社員は最低でも3人と指導されます。
また、厚生労働省のモデル定款第26条の備考にも、社員は3名以上置くことが望ましいと記されています。
医療法人の社員総会を開催するためには総社員の過半数の出席が求められ(医療法第46条の3の3第2項)、社員総会の議事は出席者の議決権の過半数で決し、可否同数のときは議長が決することになり(医療法第46条の3の3第3項)、議長が議事を決するときには議長は社員として議決に加わることができないとされています(医療法第46条の3の3第4項)。
そもそも過半数=半分より多い数という意味なので、例えば社員が2人とした場合で、社員の1人を議長に選出したとすると、この議長は議決に加わることができず、社員1人で議事を決することになる訳ですが、議長兼社員は出席者としてはカウントされるため、社員1人では出席者の議決権の過半数とはならず、社員総会の議決ができないということにもなってしまいます。
こうした医療法の趣旨を鑑みて、社員は最低でも3人と指導されます。
医療法人の役員の構成と人数
医療法人の役員は、理事と監事のことを指し、最低でも理事は3人、監事は1人、社員総会の決議で選任する必要があります(医療法第46条の5第1項)。
また、理事のうち一人を理事長とし、理事長は原則医師・歯科医師である必要があります(医療法第46条の6第1項)。
理事長は、全ての理事で構成される理事会で選出することになっています(医療法第46条の7第2項第3号)。
以下のどれかに該当する場合は、理事・監事になることができません(医療法第46条の5第5項、第46条の4第2項)。
①法人
②心身の故障により職務を適正に執行できない者
③医事に関する法律で罰金以上の刑を受けていて、刑の執行が終わってから2年を経過していない
④その他、禁固以上の刑を受けて、刑の執行が終わっていない者
また、医療法人と関係のある特定の営利法人(いわゆるMS法人等)の役員が、医療法人の役員として参画することは医療法人の非営利性という観点から適当ではないとされています(医療法人管理指導要綱Ⅰ2(3))。
監事は、上記の役員になることができないケースに加えて、監事自身が就任している医療法人の理事や、職員と兼任することはできません(医療法第46条の5第8項)。
ただし、医療法人の社員を兼ねることは可能です。
なお、監事は他の役員と親族等の特殊な関係がある者ではないことも求められています(医療法人管理指導要綱Ⅰ2(6))。
監事は、医療法人の業務監査と財産の状況を監査する必要があるため(医療法第46条の8第1号、第2号)、監査能力のある人を選任することとされています(医療法人管理指導要綱Ⅰ2(6))。
役員の任期は最長でも2年が限度で、それを超えることはできません(医療法第46条の5第9項)。
なお、医療法人の設立当初の役員は、定款で定めなければならないとされています(医療法第44条第4項)。
また、役員が受け取るべき報酬も確定しておきましょう。
事業年度の設定
医療法人の事業年度(会計年度)は4月1日から翌年3月31日までとされていますが、定款で異なる事業年度を設定しても問題ありません(医療法第53条)。
それでは1年以上の事業年度を設定しても問題無いかというと、医療法人の会計は一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うこととされており(医療法第50条)、法人税法第13条では、事業年度の期間が1年を超える場合は1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間が生じた場合は、その1年未満の期間)を事業年度と定義しているため、定款で任意の事業年度を設定するとしても、1年を超えない期間で設定する必要があります。
事業年度を設定する際は、医療法人の設立がどのタイミングになるのかを見極めることが必要です。
例えば、東京都の医療法人スケジュールで3月の仮申請をして設立を進める場合、医療法人の設立認可がおりるのが8月末です。
認可証を受け取って法務局に設立登記申請をした日が法人の設立日となります。
具体例を挙げると、定款で医療法人の事業年度を毎年9月1日から翌年8月31日までと定め、設立後最初の事業年度を法人の設立の日から翌年の8月31日までと定めた場合で、医療法人の設立登記申請をしたのが8月29日だったとき、定款の定めに従えば最初の事業年度は登記申請をした8月29日から翌年の8月31日、1年と3日となります。
しかし、法人税法の規定により事業年度が1年を超える場合は1年ごとに区分しなければならず、この場合は、設立日である8月29日から翌年8月28日までを1期目の事業年度、1期目末日の翌日である8月29日から8月31日の3日間を2期目の事業年度として、法人税の確定申告をすることになってしまいます。
こうした事態を避けるためにも、法人の設立タイミングを見極めた事業年度の設定が必要です。
ちなみに、上記事例の場合は、医療法人の事業年度を8月1日始まりの翌年7月31日締めにして最初の事業年度の設立日から翌年7月31日までとするか、事業年度は9月始まりのにして法人設立登記のタイミングを9月にするか、どちらかの対応が必要です。
財産状況と負債状況の整理
医療法人を設立すると、個人開設診療所で使用していたドクター個人の資産やその資産取得に要した負債などを、法人開設診療所に引き継ぐことができます。
資産の拠出
医療法人はその業務を行うために必要な資産を所有していなければならず(医療法第41条第1項)、その資産は、医療法人が開設する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院の業務を行うために必要な施設、設備、資金とされています(医療法施行規則第30条の34)。
医療法人の設立時には、こうした資産条件を満たすために、個人開設診療所時代に使用していた医療機器や運転資金を拠出することになります。
拠出は寄付と言い換えても良く、拠出した資産は、医療法人が解散したり、拠出者が医療法人の社員でもある場合でその社員が医療法人の社員資格を喪失したりしたとき、返還されることはありません。
拠出することができるのは、現金等の金銭や医療機器だけでなく、医業未収金といった債権や、建物や土地といった不動産も拠出することができます。
他方で、医薬品等の棚卸資産については、東京都では拠出することができません。
また、リース機器や賃貸借物件のように、所有権が第三者に帰属しているものについても拠出することができません。
拠出できる資産については、都道府県により取扱いが異なるため、必ずどの都道府県でも、都度取り扱いを確認するようにしてください。
負債の拠出
個人開設診療所の医療機器購入費用などで、拠出した資産を取得するために発生した負債については、資産と同様に医療法人に引き継ぐことが可能です。
ただし、個人開設診療所の運転資金として借入した負債については、必ずしも資金使途が明確ではないこと、その立証が難しいことなどから、医療法人に引き継ぐことはできません。
基金制度の活用
医療法人は、基金を引き受ける者を募集する旨を定款で定めることにより、基金の拠出を受けることができるようになります(医療法施行規則第30条の37第1項)。
基金とは、医療法人に拠出された財産で、医療法人と拠出者の間の合意に従って、返還義務のあるもののことを指します。
基金は返還義務がありますが、利息はつきません(医療法施行規則第30条の37第2項)。
通常の拠出は寄附とも言われているように、一度医療法人に提供するともう戻ってきません。
一方、基金であれば、基金拠出契約で定めた期間を経過し、返還のための条件を満たすことで手元に財産が戻ってきます(金銭以外を拠出した場合は、拠出時の価額に相当する額の金銭が戻ってくる)。
一定期間、塩漬けになってしまうという点と、いずれ返還されるという点を考慮して、基金制度を取り入れるかどうかを決定します。
リース物件と賃貸借契約の整理
リース契約や不動産の賃貸借契約など、所有権が第三者にある医業・歯科医業に関する資産は拠出できないということは既にお伝え済みです。
しかし、医業・歯科医業の業務に必要不可欠なものである場合は、医療法人化後も継続して契約を結ぶ必要があります。
通常、医療法人化をする際の行政手続で、これらの契約を個人から法人へと引き継ぐための書面を認可権者へ提出する必要があるため、早い段階で債権者へと医療法人化する旨、その際に契約を引き継ぎたい旨を伝えておきます。
医療関連を専門でやっているリース会社であれば、まず問題なく引継ぎはできます。
土地や医療施設を賃貸している場合、オーナーの意向によっては引継ぎできないということも考えられるため、なるべく早い段階で根回しをしておくことが重要です。
法人化後の診療体制の確定
個人の場合、1人で複数の診療所を開設することはできません。
しかし、法人の場合は1法人で複数の診療所を開設することができます。
法人化後も個人時代の診療所だけを引き継いでいくのか、それとも親族や知り合いを巻き込んで多店舗展開とするのか。
あるいは、診療所ごとの医師・歯科医師やスタッフの人員数、診療科目や診療時間等について、どのようにするかを決めておきます。
病院・診療所の開設者は、その病院・診療所を医師・歯科医師に管理させる必要があり(医療法第10条第1項、)、医療法人が開設する医療機関の管理者に就任する場合は、管理者はその法人の理事にも同時に就任する必要があります(医療法第46条の5第6項)。
法人化後の事業計画と予算の策定
認可手続では、医療法人化後2年間の事業計画と予算を作成します。
個人開設診療所で既に実績がある場合は、その実績をもとに予算を作成していきます。
事業計画書
事業計画書に記載する内容は、運営方針、採用計画、建物の新築・増改築計画、物品計画、資金計画、弁済計画等の法人運営に関する様々な要素について、可能な限り具体的に記載をしていきます。
例えば引継債務に関する弁済計画がある場合には、認可申請書に添付する債務に関する資料との数字の整合性に気を付けながら、作成します。
事業計画書の初年度は、予算書とは異なり法人の設立月から1期間としてカウントするため、予算書とは一致しないこに注意が必要です。
予算書・予算明細書・職員給与費内訳書
予算書は、法人化に際して大きく経営環境が変わらないのであれば、過去の実績と乖離した数字にならないように気を付けます。
また、初年度は法人の設立月ではなく、診療所の開設月から最初の事業年度末を1期間としてカウントします。
通常、法人設立から診療開始までは1か月程度のタイムラグがあるので、その点を考慮して作成します。
予算書に記載する金額は、各種契約書や先に確定した役員報酬などと齟齬が無いようにします。
職員給与費内訳書は、法人化後の診療所の体制を基準に、作成します。
予算明細書等も含めて、各書類の整合性が取れているか、注意してください。
事業計画書と予算書の添付の省略
以下の項目に全て当てはまっている場合、認可申請時に事業計画書と予算書の添付を省略することが可能です。
①法人化する医療施設が、診療所1か所のみ
②病床のない診療所
③法人化する診療所での個人開設実績が2年以上ある
④診療所の開設者、設立代表者、理事長、管理者がすべて同一人物
⑤診療所に常時勤務する医師または歯科医師が1人または2人
⑥診療所の過去2年間の黒字の確定申告書を添付できる
⑦医療法人設立後2年間、事業の変更がない
個人診療所時代の実績の集計
過去2年以上の個人開設実績があって、確定申告もきちんと行っているような場合は、そこまで実績表の作成は難しくないと思います。
確定申告の数値を確認しながら、東京都の様式のガイドに沿って記入していきます。
仮に実績が無かったとしても、仮申請の時点で診療を行うために必要な施設や設備に関する様々な契約が締結されていること、収支ともに具体的な裏付けがあることなどが求められます。
定款の作成
医療法人設立に向けて概要が固まった段階で、定款を作成します。
定款は、厚生労働省や都道府県がモデル定款を作成しているため、ある程度はモデル定款に沿った内容で作成いたします。
定款に必ず記載しなければいけないのは、以下の事項です。
①目的
②名称
③開設しようとする医療機関の名称・開設場所
④事務所の所在地
⑤資産・会計に関する事項
⑥役員に関する事項
⑦理事会に関する事項
⑧社員総会・社員の資格の得喪に関する事項
⑨解散に関する事項
⑩定款の変更に関する規定
⑪公告の方法
このほかにも、例えば基金制度を採用する場合には基金制度についての規定を入れる必要があります。
定款記載事項のうち、事務所の所在地と公告の方法以外の項目を変更する場合には、定款変更の認可を受ける必要があります。
定款変更の認可は、実質的には新規設立認可と同じような書類を準備しなければいけないため、非常に手間と時間がかかります。
役員の員数や法人の名称など、設立の段階でなるべく細かいところまで作りこんで、自己の変更をできる限り減らすようにしたいものです。
設立総会の開催
医療法人の設立認可申請をするために、まずは設立者で集まって、法人の設立に必要な事項を決めるための設立総会を開催します。
設立総会は、仮申請の日付よりも前に済ませておく必要があります。
決議しなければいけない事項は、各都道府県の手引きなどもご参照ください。
東京都の手引きでは、記載例として以下の内容を決議することとされています。
実際には、各団体の設立内容に合わせて、必要な決議をしていくこととなります。
具体的には以下の内容を設立趣旨として承認します。
①医療施設の開設からの発展経過
②法人の設立意図
③法人の設立予定年月
④診療所等の開設予定年月
⑤事業内容
⑥医療法人の名称の由来、その他の重要事項
設立時の医療法人の社員となる人を確定させます。
通常は、設立総会に設立者として参加した人は全員設立時社員として決議します。
事前に作成済みの定款を承認します。
関係者に事前に共有している場合でも、改めてその場で内容を読み上げて、確認しておくとよいでしょう。
事前に作成している財産目録等に即して、どのような資産・負債が誰から拠出されて、評価額がいくらなのかを確認し、承認します。
基金制度を活用した拠出を受ける場合は、基金拠出契約について、返還時期なども確認しておきます。
資産計上しないリースは、別途リース契約の引継ぎということで承認を得ます(第8号議案)。
医療法人の設立当初の役員は定款で定めることとされており(医療法第44条第4項)、第3号議案で承認された定款の内容に従って、設立当初の理事・理事長・監事を選任します。
なお、設立当初の役員の任期は定款で定めるので、その定款の定めに従います。
医療法人の設立手続は、設立者が共同して東京都知事に対して申請をすることになりますが、便宜上、設立者のうち代表権を有するものを1名選任して、その設立代表者に権限を委任する形で認可申請手続をすることができます。
この場合、設立者の中から互選で設立代表者を選任して、その旨を議事録に記載します。
医療法人が開設する医療機関に関する建物や土地を、賃貸借物件で賄う場合は、その契約についての承認を得る必要があります。
個人開設時代からの契約を引き継ぐ場合は、その契約を引き継ぐ旨も言及します。
資産計上をしないリースについては、個人開設時代のリース契約を法人に引き継ぐ旨の承認を得ます。
あくまでも法人設立をする上での設立者内での承認の話なので賃貸借契約にしろ、リース契約にしろ、事前に債権者やリース会社と調整しておくことが必要です。
事業計画・収支予算は、申請書に添付をしない条件に当てはまる場合でも必ず作成します。
収支予算には役員報酬についても計上されているはずなので、本議案内で、各役員の支給決定額も含めて承認するようにします。
認可申請書類の準備
設立総会が済んだら、仮申請に向けて書類を整えていきます。
東京都の医療法人設立認可申請では、最低限、以下の書類が必要です。
詳細は、東京都の手引きも確認するようにしてください。
必要な書類 | 備考 |
---|---|
受付票 | |
医療法人設立認可申請書 | 日付指定あり |
定款 | |
設立総会議事録 | 仮申請より以前の開催日付 |
財産目録 | 日付指定あり |
財産目録明細書 | 日付指定あり |
不動産鑑定評価書 | 不動産を拠出する場合 |
減価償却計算書 | 日付指定あり |
現物拠出の価額証明書 | 日付指定あり |
基金拠出契約書等 | 基金制度を採用する場合に添付 |
拠出(寄附)申込書 | 基金制度を採用しない場合に添付 |
預金残高証明書 | 仮受付時点から3ヶ月以内のもの |
診療報酬等の決定通知書 | 未収入金を拠出する場合、直近2ヶ月分 |
設立時の負債内訳書 | 日付指定あり |
負債の説明資料 | |
負債の根拠書類 | 金銭消費貸借契約書や支払い予定表等 |
債務引継承認願 | 債権者ごとに作成 |
リース物件一覧表 | 資産計上しないリース契約の場合に添付 |
リース契約書の写し | 現在の契約書の写しを添付 |
リース引継承認願 | リース会社ごとに作成 |
役員・社員名簿 | 日付指定あり |
履歴書 | 役員・社員全員部必要 設立総会の日付 |
印鑑登録証明書 | 役員・社員全員部必要 仮受付時点から3ヶ月以内のもの |
設立代表者への委任状 | 設立総会の日付 |
役員就任承諾書 | 設立総会の日付 |
管理者就任承諾書 | 設立総会の日付 |
理事長の医師免許証の写し | 原寸大のものを添付 |
管理者の医師免許証の写し | 原寸大のものを添付 |
理事の医師免許証の写し | 原寸大のものを添付 |
診療所等の概要 | |
施設等の概要 | 附帯業務をする場合 |
周辺の概略図 | |
建物平面図 | |
不動産賃貸借契約書の写し | |
賃貸借契約引継承認願 | |
土地建物登記事項証明書 | 仮受付時点から3ヶ月以内のもの |
近傍類似値について | 設立しようとする法人の利害関係者等から物件を貸借する場合のみ添付 |
事業計画書 | 法人の初年度が6ヶ月未満の場合は3年分 |
予算書 | 法人の初年度が6ヶ月未満の場合は3年分 |
予算明細書 | |
職員給与費内訳書 | |
実績表 | |
確定申告書 | |
診療所の開設届及び変更届の写し |
設立認可のための手続:仮申請後、認可取得まで
補正対応と本申請
無事に仮申請の受付期間内に書類を提出することができたら、都道府県が提出書類を事前(仮)審査したうえで、必要に応じて補正対応の連絡が入ります。
基本的には、何らかの補正指示をされることがあると思っていただいた方が良いかと思います。
補正事項があまりにも多い場合には、どの自治体であっても、次回以降の申請スケジュールにするように指導されることもあります。
したがって、仮申請の段階でしっかりと書類を完成させていくつもりで準備をすることが必要です。
仮申請から本申請までの期間は3か月ありますが、仮申請直後に事前審査の結果が送られてくるわけではないので、あまり時間的な余裕はありません。
補正事項に対して、本申請の期日までにすべて改善することができれば、無事に正式な認可の審査へと回されることになります。
本申請の期日までに間に合わない場合は、残念ながら次回以降の申請スケジュールで、再度仮申請から進めることになります。
医療審議会と認可
都道府県知事が医療法人の設立の認可する/しない処分をするにあたって、事前に医療審議会の意見を聴くこととされています(医療法第45条第2項)。
したがって、医療審議会の開催に合わせて医療法人の認可スケジュールが組まれています。
都道府県知事が認可する処分をしようとしているところに、医療審議会が反対の意見をして認可しない処分にされるというようなことはまずないですが、本申請をしたとしても、最終的に認可する処分が下されるまでは、一安心できない状況です。
東京都の場合は、仮申請をしてからおおむね5か月後くらいの日程で医療審議会が開催され、そこでの答申が済み次第、認可する処分が下されることになります。
認可証が交付されるのは、仮申請をしてから5か月後の月の下旬ごろになります。
認可後に必要な手続
都道府県知事による認可が下りただけでは、まだ医療法人は設立できていません。
認可証が交付されてから14日以内に、管轄の地方法務局で医療法人の設立登記申請をして、初めて医療法人の設立が完了します。
また、医療法人の設立登記後には、法人開設診療所の開設許可、個人開設診療所の廃止届、法人開設診療所の開設届、保険医療機関の指定申請等の行政手続や、法人口座開設、各種契約の名義変更といったことまで、さまざまにやるべきことがございます。
認可後の手続については、以下の記事で詳しく解説いたします。
行政書士TLA観光法務オフィスでは、医療法人やクリニックに関するお手続のサポートをしております。
診療所の医療法人化は、どの都道府県で進めることになっても、非常に手間と時間のかかる手続です。
そして、時間がかかるだけではなく、医療法の趣旨にのっとって、適切な手順で設立手続を行い、適切な体制を満たしていることを書面で示す、骨の折れる作業です。
もちろん、ドクターご自身でもやれないことはない手続ですし、場合によってはクリニックのスタッフに任せることもあるかもしれません。
しかし、途中で説明したとおり、医療法人の設立で準備する書類は種類も多く内容も細かく、行政手続に慣れていなければ補正も増えて、スムーズに認可を受けるところまで進めないこともございます。
私共は、貴重なドクターのお時間を確保するため、過去の知見を集約して、医療法人化に向けて適切なロードマップをお示しすることが可能です。
もし、医療法人化について、気になることがございましたら、ぜひ一度私どもにお話をお聞かせください。
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