医療法人では、理事長が交代するときには、様々な法人内手続と、行政手続を行う必要があります。
本記事では、医療法人社団の理事長が交代するときに必要な手続とその手順、流れについて見ていきます。
論点としては、①任期満了による退任か任期途中の辞任か、②既存の理事から理事長を選出するか新しい理事を選任して理事長に選出するか、という視点で確認していきましょう。
任期満了によって理事長が交代する場合
既存の理事の中から理事長を選出する
①現在の理事長が任期満了に伴い退職して理事からも退任し、
②既存の理事の方の中から新理事長を選出する場合は、
以下のような手続が必要となります。
前提として、現在の理事長が退任することで、医療法や定款で定める役員の定員を下回らないことが必要です。
- 現理事長を再任しない社員総会の開催
- 新理事長を選出する理事会の開催
- 社員総会議事録、理事会議事録、新理事長の就任承諾書、履歴書の作成と押印
- その他必要書類の収集と役員変更届の作成、提出
- 新理事長の変更登記
現理事長を再任しない社員総会
このケースでは任期満了とともに理事長が理事の役職ごと退任し、再任しない想定です。
医療法人の役員任期は最長2年となっており、通常は全ての役員が同じタイミングで任期切れになるよう、調整しています。
全ての役員の任期が切れる前に実施される社員総会で、次期役員の選任(再任)をする際に、退任する理事については再任しないようにすればOKです。
なお、退任する理事が病院や診療所の管理者となっている場合は、退任に伴い新しい管理者を選任する必要があります。
新理事長を選出する理事会
旧理事長の任期が満了した翌日に、新役員構成による理事会を開催して、理事長を選出します。
3月31日が任期期日の理事長がいた場合、4月1日に新しい理事体制の理事会を開催して、4月1日時点で理事の資格がある人によって理事長を選出することになります。
役員構成が旧理事長の任期満了日前後で変わってしまうため、任期期日より前の日に理事長選出のための理事会を開催して、理事長を予選することはできません。
新しく理事を選任する
①現在の理事長が任期満了に伴い退職して理事を辞任し、
②新しく理事を選任して、その新理事が新理事長に就任する場合は、
以下のような手続が必要となります。
- 新理事を選任する社員総会の開催
- 新理事長を選出する理事会の開催
- 社員総会議事録、理事会議事録、新理事長の就任承諾書、履歴書の作成と押印
- その他必要書類の収集と役員変更届の作成、提出
- 新理事長の変更登記
社員総会
このケースでも旧理事長が任期満了とともに退任するため、社員総会では旧理事長を再任しなければOKです。
社員総会では、同時に新しい理事の選任を決議します。
すべてのパターンで言えることですが、旧理事長が医療施設の管理者になっている場合は、新しい管理者についても決議する必要があります。
理事会
旧理事長の任期が満了した翌日に、新役員構成による理事会を開催して、理事長を選出します。
役員構成が旧理事長の任期満了日前後で変わってしまうため、理事長選出のための理事会を予選ですることはできません。
任期途中で理事長が交代する場合
既存の理事の中から理事長を選出する
①現在の理事長が任期の途中で退職して理事を辞任し、
②既存の理事の方の中から新理事長を選出する場合は、
以下のような手続が必要となります。
前提として、現在の理事長が退任することで、医療法や定款で定める役員の定員を下回らないことが必要です。
- 現理事長の辞任届提出
- 現理事長を解任する社員総会の開催
- 新理事長を選出する理事会の開催
- 社員総会議事録、理事会議事録、新理事長の就任承諾書、履歴書の作成と押印
- その他必要書類の収集と役員変更届の作成、提出
- 新理事長の変更登記
社員総会
このケースでは旧理事長が任期途中で辞任をするため、まずは辞任届の提出を受けて、社員総会では旧理事長の理事解任決議をします。
旧理事長が医療施設の管理者になっている場合は、新しい管理者についても決定しておく必要があります。
理事長の選出と解職はモデル定款上、理事会で行いますが、理事長は前提として医療法人の理事でもあるため、理事の解任決議をすることで自動的に理事長としての職も解かれることになります。
理事会
旧理事長が辞任した翌日に、新役員構成による理事会を開催して、理事長を選出します。
仮に、旧理事長が辞任後に平理事に残るような場合であれば、社員総会よりも前に新理事長を選出する理事会を開催して、予選することが可能です。
今回は、旧理事長が理事長の辞任と同時に理事としても退任することになり、役員構成が変わってしまうため理事会での新理事長の予選はできません。
新しく理事を選任する
①現在の理事長が任期の途中で退職して理事を辞任し、
②新しく理事を選任して、その新理事が新理事長に就任する場合は、
以下のような手続が必要となります。
- 現理事長の辞任届提出
- 現理事長を解任し、新理事を選任する社員総会の開催
- 新理事長を選出する理事会の開催
- 社員総会議事録、理事会議事録、新理事長の就任承諾書、履歴書の作成と押印
- その他必要書類の収集と役員変更届の作成、提出
- 新理事長の変更登記
社員総会
このケースでも旧理事長が任期途中で辞任をするため、まずは辞任届の提出を受けて、社員総会では旧理事長の理事解任決議をします。
併せて、新理事の選任決議と、旧理事長が医療施設の管理者になっている場合は、新しい管理者についても決議しておく必要があります。
理事会
旧理事長が辞任した翌日に、新役員構成による理事会を開催して、理事長を選出します。
仮に、旧理事長が辞任後に平理事に残るような場合であっても、新しい理事を選任することで、新旧の役員構成が変わってしまうため理事会での新理事長の予選はできません。
理事長の変更手続時に必要な書類
都道府県に提出する役員変更届
理事長の変更を含んだ役員変更手続に関わる書類は、一般的には以下に記載のとおりとなります。
都道府県ごとに必要な書類や作成方法が異なることも有るため、最終的には各都道府県のWebサイトを確認していただくのが確実です。
- 社員総会議事録(旧理事長の辞任と新理事の選任)
- 理事会議事録(新理事長の選出)
- 旧理事長の辞任届
- 新理事の履歴書
- 新理事の就任承諾書
- 新理事の印鑑登録証明書
- 新理事の医師(歯科医師)免許証のコピー
- 役員名簿
法務局に提出する登記申請書類
理事長は医療法人の登記事項であるため、変更がある場合は都度登記申請が必要です。
理事長の変更に伴う登記申請で一般的に必要になる書類は以下のとおりです。
個別のケースによって必要書類が異なることもございますので、詳細は最寄りの法務局や、登記の専門家である司法書士にお尋ねください。
当事務所にご相談いただく場合は、当事務所経由で司法書士の方をご紹介させていただきます。
- 社員総会議事録(旧理事長の辞任と新理事の選任)
- 理事会議事録(新理事長の選出)
- 旧理事長の辞任届
- 新理事の就任承諾書
- 新理事の印鑑登録証明書
- 新理事の医師(歯科医師)免許証のコピー
当事務所では医療法人に関するお手続のサポートをしております。
理事長の交代や2年に一度の再任というタイミングで発生する都道府県や保健所へのお手続を、お忙しいドクターの皆様に代わって対応いたします。
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