医療法人の決算後の事業報告・決算届手続の流れを解説

決算後の事業報告手続

医療法人は、毎年の事業年度が終わると、必ず2か月以内に事業報告書などの書類を作成して、理事会、社員総会で承認を受ける必要があります。
そして、事業年度終了後3か月以内に、それらの事業報告書類などをまとめて都道府県知事宛に届出することが義務付けられています。
この手続を、決算届や事業報告書等提出と呼びます。
手続の名称は都道府県によって異なるため、この記事では便宜上、事業報告手続と呼ぶことにして、その具体的な手続の流れや必要な書類について解説をしていきます。

この記事の想定読者

以下の①~③のすべてに当てはまらない医療法人社団
社会医療法人ではない
②貸借対照表の負債の部の合計額が50億円未満または損益計算書の収益の部の合計額が70億円未満
診療所のみ開設していて、病院または老人保健施設を開設していない

目次

事業報告手続の全体像

事業年度終了後、都道府県知事に届出をするまでの事業報告手続の全体像は以下のとおりです。

  1. 事業報告書等の書類を作成する
  2. 事業報告書等について監事の監査を受ける
  3. 事業報告書等について理事会の承認を受ける
  4. 事業報告書等について社員総会の承認を受ける
  5. 都道府県知事に事業報告手続をする

それぞれのステップについて、細かく分解して手続の内容を見ていきましょう。

事業報告書等の作成

医療法人は、毎年の会計年度が終了して2か月以内に、次の書類を作成する必要があります(医療法第51条第1項)。

①事業報告書
②財産目録
③貸借対照表
④損益計算書
⑤関係事業者との取引の状況に関する報告書
⑥その他厚生労働省令で定める書類

①から⑤の書類は、各都道府県のWebサイトで様式をダウンロードできることがほとんどなので、毎年必ずダウンロードして利用するようにしてください。
毎年の手続なので、1年前に作成した時の様式ファイルをそのまま利用するということも多いと思いますが、知らないうちに様式が変わって新しい様式の書類と差し替えになる、ということはあり得る話なので、面倒と思わずに毎年新しいファイルを都度ダウンロードして利用しましょう。

その他厚生労働省令で定める書類については、

①社会医療法人
②貸借対照表の負債の部の合計額が50億円未満または損益計算書の収益の部の合計額が70億円未満の医療法人

に該当しない場合は気にしなくて大丈夫です。

5種類の書類を作成する

事業報告書

事業報告書には、医療法人の事業の概要を記入していきます。
都道府県によっては記入例等が用意されているので、その案内に従って記載していけばOKです。

「1 医療法人の概要」欄では「設立認可年月日」と「設立登記年月日」を記入することになっています。
この2つはそれぞれ別物ですので注意してください。
設立登記年月日は医療法人の登記事項証明書に記載されていますが、設立認可年月日は過去の認可証を確認して記載します。

「役員及び評議員」欄では、理事と監事を漏れなく記載します。
理事で診療所の管理者に就任している場合は、その旨も記載します。

また、事務所の所在地や診療所の所在地を記入する場合は、登記事項証明書に記載されている通りに記載をします。

「当該会計年度内に社員総会又は評議員会で議決又は同意した事項」には、会計年度内の社員総会で議決した事項を記載するため、当該会計年度の決算承認は含まれないことに注意が必要です。

財産目録

財産目録の日付は、事業年度の最終日を記入します。
また、税理士事務所や会計事務所が作成した決算書を参考にしながら、数値の入力をしていきます。

①流動資産
②固定資産
③資産の部の合計
④負債の部の合計
⑤純資産の部の合計

の5つについて、単位に間違いが無いように転記をします。

①~⑥の書類をひっくるめて事業報告書等と呼びます。

貸借対照表

貸借対照表の日付も、事業年度の最終日を記入します。
貸借対照表は、経過措置医療法人と呼ばれる持分の定めがある医療法人と、持分の定めのない医療法人によって記載方法が若干異なるため注意が必要です。

自治体Webサイトから入手できる貸借対照表書式の純資産の部は、通常①基金、②積立金(うち代替基金)、③評価・換算差額等の項目が記載されています。
現在の医療法人制度では持分の定めのある医療法人を設立することができないので、持分の定めのない医療法人として設立をしますが、この持分の定めのない医療法人については書式通りの項目に数値を入力していきます。

一方で持分の定めのある医療法人の場合は、税理士事務所・会計事務所が作成した決算書には「出資金」という項目があるはずです。
この場合、書式の「基金」の代わりに「出資金」と書き換えて、「うち代替基金」を削除します。

その他の資産の部、負債の部も税理士事務所・会計事務所が作成した決算書を確認しながら、単位間違いが無いように転記します。

損益計算書

損益計算書の日付は、会計事業年度をそのまま記載します。
貸借対照表もそうですが、診療所のみを開設している場合と、病院・老人保健施設を開設している場合とで書式が異なるため、ダウンロードした書式がどちらのものになっているか、よく確かめてから作成するようにしましょう。

税理士事務所・会計事務所が作成した決算書は勘定科目が詳細に記載されておりますので、それらの数字を合算したものを転記していきます。
やはり、単位には注意します。

利益がマイナスになる場合は「利益」を「損失」に修正します。

関係事業者との取引の状況に関する報告書

医療法人の役員やMS法人が医療法人がと一定金額以上の取引をする場合には、特殊の関係がある者(関係事業者)との取引として報告をする必要があります。
関係事業者になる対象者と、対象取引については以下のとおりです。

報告書の作成対象になる者(A)

次の①~⑤のどれかに該当する
①医療法人の役員、役員の配偶者または二親等以内の親族(近親者
②医療法人の役員またはその近親者が代表者である法人
医療法人の役員またはその近親者が株主総会、社員総会、評議会、取締役会、理事会の議決権の過半数を占める法人
他の法人の役員が当該医療法人の社員総会、評議会、理事会の議決権の過半数を占める場合の当該他の法人
③の法人役員が当該医療法人を除く他の法人の株主総会等の議決権の過半数を占める場合の当該他の法人

報告書の作成対象になる取引(B)

次の①~⑥のどれかに該当する
事業収益または事業費用の額が1000万円以上で、かつ、医療法人の会計年度の本来業務収益/附帯業務事業収益/収益業務事業収益の総額または本来業務費用/附帯業務事業費用/収益業務事業費用の総額の10%以上を占める取引
事業外収益または事業外費用の額が1000万円以上で、かつ、医療法人の会計年度の事業外収益または事業外費用の総額の10%以上を占める取引
特別利益または特別損失の額が1000万円以上である取引
資産または負債の総額が医療法人の会計年度末日の総資産1%以上を占め、かつ、1000万円を超える残高になる取引
⑤資金貸借/有形固定資産/有価証券の売買その他の取引の額が1000万円以上で、かつ、医療法人の会計年度末日の総資産1%以上を占める取引
⑥事業の譲受または譲渡の場合で、資産または負債の総額の大きい額が1000万円以上で、かつ、医療法人の会計年度末日の総資産1%以上を占める取引

報告書の作成

都道府県によって若干記載内容が異なることがありますが、基本的には(A)の取引相手の種類と、(B)の取引の具体的な内容を記載します。
取引条件の決定方法が市場相場などを反映しており、不当な条件ではないことを説明する必要があります。

監事の監査

医療法人の監事は、医療法人が事業報告書等を作成した後事業報告書等を受領し、業務や財務の状況について監査を行い、監査報告書を作成する必要があります(医療法第46条の8第3号、第51条第4項)。

監査の内容

監事は業務または財産の状況を監査します(医療法第46条の8第1号、第2号)。
業務監査の具体的な内容は、理事会その他の重要な会議への出席、社員総会提出議案等を調査して、理事の職務執行が法令や定款に違反していないかどうかを監査します。
財産の状況の監査は、会計帳簿の調査や、貸借対照表・損益計算書等の計算書類の監査が含まれます。

監査の結果、業務執行や財産の状況について不正行為、法令違反、定款違反となる重大な事実を発見した場合には、監事は都道府県知事、社員総会、評議員会、理事会への報告が義務付けられています。
この報告に必要があるときは、監事は社員総会を招集することができます(医療法第46条の8第4号、第5号、第6号)。

監査報告書の作成

監査報告書は、各都道府県ごとにそのフォーマットが用意されているため、基本的にはそのフォーマットに沿って作成していきます。
監査報告書に記載する内容としては以下の4項目があります(医療法施行規則第33条の2の3)。

①監査の方法とその内容
②事業報告書等が法令に準拠して作成されているかについての意見
③監査のため必要な調査ができなかったときは、その旨と理由
④監査報告書を作成した日

監査報告書の内容の通知

監事は、次のいずれか遅い日までに医療法人社団の理事に対して監査報告書の内容を通知する必要があります(医療法施行規則第33条の2の4)。

①事業報告書等を受領した日から4週間を経過した日
②理事と監事が合意により定めた日があるときは、その日

監査報告書の理事会・社員総会への提出

監事は監査報告書を作成した後、会計年度終了後3か月以内に社員総会または評議員会および理事会に監査報告書を提出する必要があります(医療法第46条の8第3号)。

理事会の承認

事業報告書等の理事会での承認

医療法人は、監事の監査を受けた事業報告書等について理事会の承認を受ける必要があります(医療法第51条第6項)。

社員総会の承認

理事会の承認を受けた事業報告書等の社員総会への提出

医療法人社団の理事は、理事会の承認を受けた事業報告書等を社員総会に提出する必要があります。
理事は、社員総会の招集の通知の際、社員に対して、承認を受けた事業報告書等を提供する必要があります(医療法第51条の2)。

事業報告書等、監査報告書、定款の備置き

医療法人は、以下の書類をその主たる事務所に備えて置き、その社員や評議員または債権者からの請求があった場合には、いつでも閲覧させられるようにしておく必要があります(医療法第51条の4第1項)。

①事業報告書等
②監事の監査報告書
③定款または寄附行為

また、医療法人は、理事が理事会の承認を受けた事業報告書等を提出した社員総会の日の1週間前の日から5年間、事業報告書等と監事の監査報告書をその主たる事務所に備え置く必要があります(医療法第51条の4第3項)。

事業報告書等の内容の報告と承認

理事は、社員総会に提出された事業報告書等(貸借対照表と損益計算書を除く)の内容を社員総会で報告します。
また、事業報告書等の貸借対照表と損益計算書については社員総会で承認を受ける必要があります(医療法第51条の2)。

都道府県知事への事業報告手続

事業報告手続に必要な書類

医療法人は、会計年度終了後3か月以内に、以下の書類を都道府県知事に届出する必要があります(医療法第52条第1項)。

①事業報告書等
②監査報告書

届出をする際には副本を添付する必要があります(医療法施行規則第33条の2の12第1項)。

事業報告手続後の書類の閲覧請求

都道府県知事は、事業報告書等、監査報告書、定款について請求があった場合にはこれを閲覧させなければなりません(医療法第52条第2項)。
閲覧対象となるのは、過去3年分の事業報告書等と監査報告書です(医療法施行規則第33条の2の12第2項)。

まとめ

事業報告手続は、会計年度が終了してから3か月以内に完了させる必要があります。
通常、税理士や会計士の方が決算書類を作るのに2か月程度かかりますので、実質準備期間は1か月程度となります。
確実に期間内に手続を終わらせるためには事前の段取りが重要です。
ぜひこの記事を参考にしながら準備を進めてみてください。

当事務所ではお忙しいドクターの皆様に代わって事業報告手続の代行をしております。

手続名報酬額(税込)備考
事業報告書等作成6万6000円理事会・社員総会議事録は除く
議事録作成1万6500円~理事会・社員総会議事録

手続についてのご質問やサポートのご依頼等がございましたら、下記お問い合わせフォームより是非ご相談くださいませ。
あなたからのご連絡お待ちしております。

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